活動レポート
REPORT

オンライン分科会「モビリティ・レジリエンス ~災害時のクルマ被災をどうするか?~」を開催しました。

2022.05.26

 5月13日(金)、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)主催「第6回 災害時の連携を考える全国フォーラム」にて、日本カーシェアリング協会企画の分科会を一般財団法人トヨタ・モビリティ基金様のご協力をいただき、オンラインで開催しました。「モビリティ・レジリエンス ~災害時のクルマ被災をどうするか?~」をテーマに、日頃からご協力いただいている以下の方々にご登壇いただき、各自の取り組み紹介及びパネルディスカッションを行いました。

 

コーディネーター:所澤新一郎様(一般社団法人共同通信社 気象・災害取材チーム長)

パネリスト:黒沢康孝様(株式会社オートバックスセブン 広報・IR部長)

      諸留逸様(トヨタ自動車株式会社 社会貢献推進部 主幹)

      横田有次様(岡山県 副知事)

      吉澤武彦(一般社団法人日本カーシェアリング協会 代表理事)

 

 冒頭、「災害でクルマを被災された方々の言葉」と題した動画を上映し、実際にクルマを被災された方の生の声からクルマ被災の現状を知っていただきました。

 

 続いて、コーディネーターを務める共同通信社 所澤様より、過去の災害時の状況からクルマが被災されたことで起こる被災者の抱える問題、クルマ被災のデータ不足についての問題提起等いただきました。また、日本カーシェアリング協会が行う被災地でのクルマ無償貸出しについて写真を使って紹介いただきました。

 

 その後、各パネリストからの取り組みを紹介しました。日本カーシェアリング協会 吉澤からは、災害時にクルマで困らない仕組みを作るモビリティ・レジリエンス(災害時に被災地で行うクルマの無償貸出し支援)を紹介。そして、災害が発生した際迅速に支援を進めるための3つの行動「災害時返却カーリース*1」「モビリティ・レジリエンス・アライアンス*2」「拠点の設置」について説明を行いました。

*1 https://www.japan-csa.org/blog/archives/2738

*2 https://www.japan-csa.org/action/mobility.php

 

 岡山県 横田副知事からは、当協会と連携を始めたきっかけである2018年7月西日本豪雨での当時の状況、また、その後の連携協定締結に至った背景をご紹介いただきました。

 

 オートバックスセブン 黒沢様からは、過去の災害にて日本カーシェアリング協会へ車両寄付・運搬・整備の支援を行った事例紹介、そして、連携協定締結の背景についてご紹介いただき、「今後はモビリティ・レジリエンス・アライアンス加盟の企業及び自治体と情報交換を行い災害支援を進めていきたい」と語っていただきました。

 

 トヨタ自動車 諸留様からは、日本カーシェアリング協会とトヨタ・モビリティ基金との関りと、自社で取り組まれている「トヨタ災害復旧支援」についてご説明いただきました。

 

 後半のパネルディスカッションでは、コーディネーターの所澤様が進行役となり、パネリストの皆様へ「災害支援における連携」を軸により具体的な質問を投げかけることで、とても貴重な意見が飛び交いました。

 

 

  

 岡山県 横田副知事からは、「自治体という立場で、日本カーシェアリング協会とその活動に対し、率直にどんな印象をお持ちになりましたか?」の問いに、「地方紙にも載っていたので安心はしていました。実際にお話して、取り組みの内容やどういった支援が必要かを分かりやすく丁寧に説明いただいたことが、安心して連携できそうだと思えましたし、また、他に支援を求めやすかったです」とお話いただきました。「岡山県での被災経験を踏まえ、クルマ被災について他の自治体へ連携に関するアドバイスをいただけますか?」の問いには、「日本カーシェアリング協会さんの支援は、途方に暮れている住民を勇気づける手段であります。各地の自治体で平時からこうした支援の仕組みを見込んでいくと良いと思います」とお話され、また、「様々な形で岡山県での豪雨災害時、災害直後に被災者を支援しようとする人たちを取りまとめる中間支援組織が活動されました。また、連携の組織であります災害支援ネットワーク岡山が立ち上がっており、こうした動きは各地で広がる傾向にあると思います。各地の中間支援組織でもクルマ被災を支援することを準備する動きがどんどん広がっていけばいいなと思っています」とお話いただきました。

 トヨタ自動車 諸留様からは、「トヨタ自動車様が『モビリティカンパニー』とされた経緯について教えていただけますか?」の問いに、「我々が目指す『モビリティカンパニー』とは、世界中の人々の『移動』に関わるあらゆるサービスを提供する会社でございます。自動車産業は今、100年に一度と言われる『大変革の時代』に突入しています。これからの時代、トヨタ単独、クルマ単体では生きていけず、強みを持ち寄り、ともに競争力を高め合いながら協調できる『仲間』が必要と考え活動しています」とお話いただきました。また、「クルマ被災について、自動車に関わる企業としてどう取り組んでいきますか?そして、その活動の成果が会社単独ではなく連携することで高まることはありますか?」の問いに、「南海トラフ地震で大規模災害が発生すると避難所外避難者が全国で多くなることを踏まえ、現在車中泊避難の啓発に取り組んでおります。連携については、自治体との連携も進めており、豊田市の自治体が主催する避難所運営の訓練の中で少しお時間をいただき、クルマの使い方や車中泊避難の注意事項について説明をさせていただくなど行いました。一企業だけでやるのは限界があるので、連携によってメディアさんや市民の方も興味を持っていただけるので、そうした点でも成果が見込めるのではと考えております」とお話いただきました。

  

 オートバックスセブン 黒沢様からは、「企業として、NPOや民間団体と連携するにあたり、社内でどのような議論や意思決定がありましたか?」の問いに、「実際に連携するにあたっては、社内でいくつかの基準を設けて検討を進めました。クルマを軸に活動していることは大前提として、大切にしていたことは大きく3つ。1.『活動型方針が明確であること』2.『活動範囲が全国であること』3.『活動報告をしていただけること』です。この条件を満たす団体が日本カーシェアリング協会さんでした。このような形で意思決定させていただきました」とお話いただきました。また、「連携のメリットは何ですか?」の問いには、「企業が支援しようとした際、現地でどのような活動をするか分からない中で判断するのは時間がかかるのですが、日本カーシェアリング協会さんと連携するということを決めておけば、『日本カーシェアリング協会さんが動けば私たちも動く』というシンプルなジャッジが出来ること、これが非常に大きいことだと思っています。あとは、このよう活動をしようとしたとき、一企業だけで成すことは非常に難しいと思っており、貸出し等の運営は日本カーシェアリング協会さんがやっていただき、私たちの役割として、クルマの提供・運搬・整備と分担することで明確な支援として迅速にどんどん回っていく。これがメリットかなと思います」とお話いただきました。

  

 最後に、当協会吉澤から、本日の議論を受けた感想、そして、企業セクター、自治体との連携で民間団体が目指すべき方向性について問われ、「方向性は、どのセクターも共通で『災害時にクルマで困らない社会にする』ということ、それ以外にないように思います。しかし、自治体や企業、それぞれ単独ではコストもかかりすぎるのでなかなか実現するのは難しいでしょう。逆に、連携さえ行えたら比較的簡単に実現できると考えます。私たち非営利団体の最も重要な役割は、連携しやすい枠組みを整えて案内していくことかなと思います」と話し、本分科会は閉会となりました。

  

 参加者の皆様からいただいたアンケートでは、多くの方から「大変満足」のお声が届き、「連携の重要性を認識した」「連携方法が参考になった」「災害の経験がないと必要に迫られないところがあるが、災害時に備えて考えておくことが大切であると認識した」というご意見が寄せられました。参加者の皆様からのご意見やご感想を参考に、日本カーシェアリング協会は、今後も様々な連携を通じ、全国の災害支援に取り組んでまいります。

  

【本件に関するお問合せ先】
一般社団法人日本カーシェアリング協会
E-mail: info@japan-csa.org
TEL: 0225-22-1453 FAX: 0225-24-8601