活動レポート
REPORT

分科会「クルマ被災にどう備えるか?」を開催しました !

2023.12.13

12月13日(水)、全国災害ボランティア支援団体ネットワーク(JVOAD)主催「第7回 災害時の連携を考える全国フォーラム」にて日本カーシェアリング協会企画の分科会を開催しました。「クルマ被災にどう備えるか?」をテーマに、以下の方々にご登壇いただき、各自の取り組み紹介やパネルディスカッションを行いました。

コーディネーター:所澤新一郎 氏(一般社団法人共同通信社 気象・災害取材チーム長)
パネリスト:齋藤拓 氏(一般社団法人日本自動車連盟(JAF)経営企画部経営企画課 主管)
      本田文徳 氏(いわき市 災害対策課 地域防災係長)
      吉澤武彦 氏(一般社団法人日本カーシェアリング協会 代表理事)

冒頭、協会代表の吉澤からの挨拶として、今回の分科会開催の背景をお話させていただきました。近年災害が急増する中においてもクルマ被災の実態は把握されておらず、そのため何の対策も取られていません。当協会では、このままではクルマ被災に遭う方が増え続けてしまうという危機感を持っており、一度皆さんとクルマ被災にどう備えるべきかを考えるため、今回の分科会を開催させていただきました。

始めに、実際に車を被災された方々の現状を知っていただこうと、今年の九州北部豪雨支援で災害サポートレンタカーを利用された方々の声を上映しました。

第一部は、各パネリストからそれぞれの取り組みをご紹介いただき、第二部のパネルディスカッションでは、多くの車が被災するような大きな災害が相次いでいる現状を踏まえ、【クルマ被災の実態把握】【クルマ被災をどう防ぐか】【連携を進めていくには】というテーマで話し合っていただきました。
充実したディスカッションとなりましたので、少し内容をご紹介させていただきます。

まず、【クルマ被災の実態把握】というテーマにおいて、当協会代表吉澤から「災害発生地での車の被害台数というのは現状把握されていない」としたうえで、「行政や大企業等大きな組織は、実態が把握されていないものに対して対策をとるという動きを取りづらい。『備え』を行うためは実態を把握することは大変重要」と実態把握の重要性を説明させていただきました。
実態把握の方法として「罹災証明の申請書にクルマ被災の欄を設けることはできないのか」という問いに対し、吉澤からは、実際に罹災証明の申請書に車の被災台数の記入欄を設ける自治体もあることを紹介。しかし「そのような把握を行う自治体と行わない自治体があるため、全体の実態把握は難しい。そのため、国が全自治体に対しそうするように発信することが必要」と話しました。
一方、行政の立場として、いわき市の本田様からは「いわき市の現状として、公的支援をしっかり迅速に行うために、罹災証明書に『公的な支援ができないもの』に対しての項目を設けてそれを把握するというのは、災害対応を行っている中では難しいと感じている。」とのお話がありました。既に罹災証明書で集計を開始した自治体があるものの「新たに枠を設けるだけ」というほど簡単なものではなく、平時にしっかり協議を行う必要があることが自治体担当者からの生の声で分かりました。

次の【クルマ被災を防ぐには】というテーマにおいては、実際に浸水に直面した場面でドライバーはどのように対応すべきかという問いかけから始まりました。この問いに対し、JAF齋藤様からは「大前提として、浸水していることが分かった段階で、その場所に入らない。引き返す勇気を持っていただきたい」としたうえで、アンダーパスを通過せざるを得ない場合は、壁などにペイントしてある水深計を参考にしてほしいとのことでした。JAF様は、台風・大雨時にクルマで気を付けるべき注意点をまとめたページ(※1)や水没など様々な実験検証した結果(※2)をコーポレートサイトで公開されており、車の被災を防ぐための一般ユーザーへの啓発にも力を入れています。
 ※1:https://jaf.or.jp/common/attention/flood
 ※2:https://jaf.or.jp/common/safety-drive/car-learning/user-test

いわき市は、今年の被災以前にも令和元年に台風被害を受けており、その教訓を生かして、自動車を高台等の安全な場所へ避難する取組が進められています。民間事業者等が所有する高台の駐車場等を災害一時避難施設として確保されました。昨年までに市の所有の土地とあわせて約1,560台分、今年度さらに約390台分の駐車スペースの確保を進めているということです。協会の吉澤からも「いわき市のそのような取り組みは全国的にみても進んでいる。やはり避難場所を定めておくことはとても重要で、それがスムーズな避難に通じる。ただ、そこで大丈夫か?という見直しもあわせて必要」というコメントがありました。

最後の【連携を進めていくには】というテーマにおいて、JAFの齋藤様から、JAF様と協会との繋がりが生まれたきっかけとその後の協定締結までの経緯を簡単にご紹介いただきました。また「JAFはクルマがトラブルに遭った時への対応を行っていて、『その後のケア』についてはカバーできていなかった。協会と連携したことで、大切だと認識していた『その後のケア』に関与できるというのは組織としてありがたい」とのお言葉をいただきました。
そして「自治体として協会と事前に協定を結んでおくことは有効か」という問いに対し、いわき市の本田様より「今回、当市は福島県がカーシェアリング協会と協定を締結していたため、迅速に支援いただけたと考えています。災害時の自動車支援への備えとして、協定を締結することは非常に重要と思います。」とご回答いただきました。

最後に、本日の感想を問われ、協会代表の吉澤より「これからは『車の被災に備える、ということは常識』として意識を変えて取り組んでいくことが必要だと思います。」と話し、本分科会は閉会となりました。

参加者の皆様からいただいたアンケートでは、分科会の内容に「大変満足」「満足」のご回答をいただき、「パネリストがNPO、企業、行政とは秀逸な人選だった」「クルマ被災の実態把握の難しさを実感した」「クルマ被災に対する理解が深まった」などのご感想をいただきました。ご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

日本カーシェアリング協会は、今後も様々な連携を通じ、全国の災害支援に取り組んでまいります。