活動レポート
REPORT

オーストリア・スイスのカーシェア視察 1日目 ウィーンのカーシェア

2016.07.04

今年の2月、1本のメールがウィーンから届きました。
「石巻で実践している、コミュニティ運営型のカーシェアリングを調査させてほしい」
調査の依頼主は、ウィーン工科大学で交通を専門に研究する柴山先生。な、、、なんと石巻出身の方だったのです。
柴山先生によると、コミュニティが運営するカーシェアリングは世界的に珍しいのですが、オーストリアには実践している事業者があり、そこの調査を実施したことがあって、今回はその延長線の中で日墺の比較を行いたいとのことでした。
そのメールの後、3月と4月に石巻を訪れていただき、3月には私に、4月には吉野町復興公営住宅で利用者の方々へヒアリング調査を行っていただきました。実は柴山先生の祖父母が吉野町内に以前住んでいらっしゃったこともあり、調査に協力いただいたカーシェア利用者の方々とも「あ~、あそこのお宅の~!」ってな感じで、すぐに打ち解け、ウィーンからの訪問とは思えないローカルな話題と親しみやすさの中で行われました。
3月に訪問いただいた際の様子
https://www.japan-csa.org/blog/report/activity/2016/03/31/571/
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(4月に行われたヒアリング調査の様子)
ヒアリング調査を受けながら、私たちもオーストリアの事業者のことを色々聞かせていただきました。独自にルールを決めて運営する等の様々な類似点がある一方、事業者自体は車を持たずITを活用した予約・決済システムを提供しシェアリングをサポートしているということで、私達よりも一歩も二歩も進んでいるようでした。
そこで、私たちが今一番学べる先駆者の元に実際に出向き、石巻での取り組みに還元するために学習したいと柴山先生に打診したところ、ウィーン工科大学もカーシェアリング事業者であるCARUSO側からも了解をいただき、6月17日~21日にオーストリアに視察に伺うことになりました。また、CARUSOのあるブレゲンツはスイスの国境付近に位置するため、22日にはカーシェアリングの発祥の地であるスイスのルツェルンに訪問しMobility Carsharing社へも視察に協力いただけるよう打診し、快く了解いただけることになったのです。
CARUSO
http://www.carusocarsharing.com/
Mobility Carsharing
https://www.mobility.ch/
今回、システムについて詳しく知るために、日ごろから私たちの活動を応援し続けてくださっている「カーシェアリング比較360°」を運営するIT企業J-tipsの川口社長が同行してくださることになり、また、石巻エコEVカーシェアリング検討委員会のメンバーも務めていただき、様々な面でサポートいただいているCDS経営戦略研究所の奥間さんもたまたま同じ時期に東欧で仕事が入っていたため、現地で合流して視察に参加いただけることになりました。
【カーシェアリング比較360°】
http://www.carsharing360.com/
【CDS経営戦略研究所】
http://www.cdsi.jp/
そして、元カーシェアスタッフのあやちゃんを中心に13名の有志の方々が、3月に制作した実践ガイドブックの英訳版をこの視察のために制作してくださいました。(すごいでしょ!)お陰様で私たちが5年間実施してきたことを、訪問する先々でしっかりと伝えるツールを準備することができました。
ガイドブック英語版はこちらからダウンロードいただけます。
https://www.japan-csa.org/blog/wp-content/uploads/img/CoCarshareGuideBook.English.pdf
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心のこもった英訳版ガイドブックを手に、私たちは初の海外視察というチャレンジを行うために日本を出発しました。
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【6月17日】
無事16日の夜にウィーンに到着し、その日はホテルで休み、視察第一日目は朝からウィーン工科大学に向かいました。
まずは視察のイントロダクションとして柴山先生から、2011~12年にウィーン工科大学の研究チームで行われた調査内容を中心にオーストリアで行われているコミュニティカーシェアリングの説明を聞かせていただきました。
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(ウィーン工科大学)
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(柴山先生にスライドで説明いただいている様子)
山村等で実施されている閉じたコミュニティによるカーシェアリングCARUSOと、都市部で実施されている開かれたコミュニティによるカーシェアリングCarsharing 24/7の仕組みについて非常にわかりやすく解説いただきました。
特に印象に残ったのは、
1. CARUSOが予約・決済・保険といったシェアリングを行う上での重要なポイントをしっかり押さえてプラットフォームとして提供している非常に効率的な仕組みであるということ。
2. オーストリアでは国で定められた交通費の基準があり、それ以下であれば、車の利用料を免許なしでも個人で自由に設定し貸し出すことができるということ。
3. 年間約30ユーロ(約3,500円)のオプションを保険会社に支払えば、他人の車に乗っても自動車保険が適用できる環境がある。
といったことだ。特に2と3は、個人間でシェアリングを行う環境が日本と比べて非常に進んでいると思いました。いや~、本当に勉強になった!
さて、午前中の講義を経て、午後はウィーン市内でサービスを提供しているカーシェアリング事業者Zip CarとCar2Goを実際に車が設置されている現場に行き、柴山先生に仕組みをご説明いただきました。
【CAR2GO】路駐で乗り捨てOKなカーシェア
乗り捨て型カーシェアリングです。町中に止まっているいる車を見つけたら、インターネットでパッと予約して、そのまま乗ってあとはどこでも自由に路上駐車で乗り捨てするシステムです。すごいのは、路上駐車前提で行われているシステムで、この車はお巡りさんに駐禁をきられたりしないのです。レンタカーのように数日前から予約して・・・といった感じではなく(30分以内しか予約できない)、その瞬間のタイミングで借りるシステムで、ウィーン市内で約600台活用されています。
CAR2GO
https://www.car2go.com/
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(町中でよく利用されている様子を見かけました)
【Zip car】スタンダードなカーシェア
日本のオリックスさんやタイムズさんが実施されている専用の駐車場を起点とするスタンダードなカーシェア。ヨーロッパの他の国々でも広く普及しており、会員になれば世界中の様々な場所でカーシェアリングが利用できる。
Zip car
http://www.zipcar.com/
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(町中を走るzip car)
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(ウィーン中央駅での設置場所にて)
【Drive NOW】
たまたま、BMW社の運営するカーシェア「Drive NOW」が路上に停まっているのをたまたま川口さんが見つけてくれました。(さすがカーシェアリングの専門家!)様々なカーシェアリングが実践されているウィーン市内の様子を垣間見ました。
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【ウィーン市内における自転車の活用とバイクシェアリング】
環境・交通事情・健康等様々な面でウィーンは政策的に自転車を推奨しており、バイク(自転車)シェアリングが活発に行われ、また専用道路の整備など非常に進んでいる様子を柴山先生に解説いただきました。
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(赤い部分が自転車専用道路。結構なスピードで自転車が行き来しています)
ウィーン中央駅に設置されているバイクスタンドを見学。市内様々な場所に設置されている公共のバイクシェアリングのcitybike。1時間以内に返却すれば無料。時間ごとに課金する金額が増える私たちのサポートレンタカーと同様のシステムに親近感を得ました
City bike Wien
https://www.citybikewien.at/de/
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登録すれば、専用のスタンドへの入力作業で利用できる。
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翌朝、立ち寄ってみると1台を残して全て貸し出し中でした。
いかに活用されているかを垣間見ました。
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【新しい移動手段Uber】
ウィーン工科大学への訪問と、ウィーン市街からホテルに戻る移動手段にUberというサービスを利用しました。スマートフォンで現在地と行き先を設定すると、近くにいる登録しているUberユーザーが迎えに来てくれて、目的地まで送ってくれるサービスです。日本では規制があり東京都などで一部のタクシー会社がこのシステムを利用しているにとどまっていますが、世界的には一般人がドライバー登録をどんどん行っており、非常に自由に展開されているのです。
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1人目の方は英語が話せなかったこともあり物静かでしたが、好感の持てる笑顔で迎えて下さいました。言葉が通じなくてもスマホで行き先を登録するとそれで目的地は共有でき、会計もクレジット決済なので、利用した私と川口さんは言語に不安がありましたが、問題なく利用できました。
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2人目の彼は運転中もスピーカーフォンで友人と電話ばかりいました。(言葉が分からなかったので私達には何の話をしているか全くわからなかったのですが)これもまた自由なところがUberらしいなと思いました。
まだ、明るいと思いきや、気が付けば21時30分ごろになっていて、時差ボケもある中ふらふらになりながらホテルにたどり着きました。
ちょうど夏至のあたりに訪問したということもあり、オーストリアは非常に日の出ている時間が長く、なんと22時頃まで明るいのです。
オーストリアの交通の自由さに触れた一日でした。
****番外編****
ウィーン市街地を歩いていると嬉しい出会いがありました。
「この曲を作ってくださり、ありがとうございました」
と、ご本人に直接御礼を伝えることができたのです。
いつも応援していただいているみなさまにこの曲を送ります。
KAN 『よければ一緒に』 (PV)
【オーストリア・スイスのカーシェア視察】 
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